ここ最近、ネットのニュースで飛び降り自殺の記事が続いたせいなのでしょう、ずっと忘れていたある出来事を思い出しました。
あれは猫丸の息子が小学2年くらいの時だったでしょうか。
猫丸が家に帰ると、息子がリビングで真っ青な顔をして震えているのです。
「どうしたの?」と訊くと、青い顔をして震えているのに「なんでもない…」といいます。
息子の顔色は、ますます青ざめていきます。
そんな息子の様子に「何かあったんでしょ?話してごらん」と、もう一度言いました。
息子は口ごもり、話すことを躊躇っているのがわかります。
仕方なく息子に事情を聞くのを止めて、猫丸は食事の支度があるので台所に立ちました。
当時住んでいたマンションは高台で近くには橋があり、リビングからはその橋がよく見えました。
台所には窓になっているドアがあり、台所からも橋が少し見えるのです。
冬の夕方でしたので、辺りは暗くなりかけていましたが、橋の上はパトカーの赤色灯の赤い光が幾つも見え何事か起きてることが分かりました。
「何かあったんだ…!」と声に出して外を覗き込む猫丸を見て息子が言いました。
息子) 「ママ、ぼくね、あのね、女の人がね、そこでね、いたの…」
猫) 「え? 女の人がどしたの?」
息子) 「帰ってきたら、いたの。」
猫) 「どこに?」
息子) 「玄関に…」
猫) 「女の人が玄関の所にいたの?」
息子) 「うん」
猫) 「それで?」
息子) 「……」
また、黙ってしまいました。
辺りはますます暗くなり、赤色灯の色が不安を掻き立てます。
「様子を見てこようかな…」そう呟くと、息子はもう一度話始めました。
「あのね、ぼく帰ってきてリビングにいたら、音がしたの。ドスンって…。
それで、何だろうと思って玄関に行こうとドア開けたら、いたの、女の人が。その人ね黒くて長い髪の毛で顔が血で真っ赤だったから、ボク怖くて目をつぶって、少ししてから目を開けたら…いなかったの」
と、言うのです。もしかしてその女性は、橋に来ているパトカーと関係あるのかなと直感的にそう思いました。
ただこの時、息子が見たという女性の気配は何故だか猫丸には感じませんでした。
様子を伺いに橋まで行こうと思いマンションを出る直前に詳細が分かりました。
同じマンションの奥さんが橋まで行って帰ってきたところだそうで、まだ聞いてもいないのに今見てきたことを話してくれました (^_^;)
奥さんの話にによれば、夕方4時ごろ犬の散歩をしていた人が橋の上に佇む若い女性を発見し、その女性の不審な様子から自殺するのではないかと心配になって、しばらく女性の様子を窺い見ていたそうです。
すると突然、女性は意を決したかとように橋から飛び降りようとしたので、慌てて助けようと駆け寄ったのですが間に合わず、女性は橋の下へと転落してしまったそうです。
やはり橋の上での喧騒は、女性による自殺によるものだったのです。
息子の見たという その女性が飛び降り自殺した女性かはこの時は分かりませんが、タイムリー過ぎるところを考えれば、彼女だったかもしれないと思いました。
元気が良過ぎるくらいの息子が、その日は高熱を出して寝込みました。
よほど怖かったんでしょう (^_^;)
夜中12時を過ぎた頃に、息子の熱が40度を超えました。
こんなに熱が高くなった事は初めてでした。
高い熱で息子は苦しそうにしています。息子のおでこに冷やしたタオルをおいている時、ふと、上の方から気配がしたので首を上に向けると、髪の長い若い女性が猫丸を天井から見おろしていたのです。
「うわっ!」思わず声が出ました!
その女性は息子が見たという血だらけの状態ではありませんでした。
普通の人と変わらない人間に見えますが、人間ではない証拠に天井に張り付いています。
見たところ二十代前半くらいの長い黒髪の女性。白いブラウスと紺色のスラックスパンツ姿。身長は157センチくらいの中肉中背。キレイな方です。
思わず心の中で「自殺された方?」と訊きますと頷きました。
思いを果たして自ら死を選んだのに、想いが残っているようです。
すると「死にたくて死んだんじゃない。仕方なく死んだの」と言うのです。
一体何があったのでしょう。
彼女の話を聞くことにしました。
彼女の話によれば、彼女には一緒に住んでいた男がいて、その男から毎日暴力を振るわれる生活を送っていたそうです。
毎日毎日「死ね死ね」と言われながら殴られていたそうです。
自殺する前日にも酷い暴力を受け首を締められ「お前死んでくれよ?」と泣くんだそうです!(意味がわかりません!)
男が寝ている間に彼女はそっと家を出て電車に乗り、猫丸のマンション近くの橋に辿り着き、ぼーっと海が見渡せる景色を眺めながら「私が殺されて彼が死刑になるのが一番だけど、でも殺されるのは嫌だ、怖い」と思っていたそうです。
彼女が「これからどうしょう…」と悩みながら橋の上に佇んでいると、人がやって来て自分に話掛けてくるのが分かったので「連れ戻されたら今度こそ彼に殺される!」と思い咄嗟に身を投げてしまった…というのです。
驚きました…。「死ぬつもりなんて、なかったんだ…」
なんということでしょうか。
彼女はひどい男の元に連れ戻される恐怖から、咄嗟に自殺してしまったというのです!
そんな事実が知られずに、周りからは(警察も)彼女は自分の意思で自殺したんだと思われていくのでしょう。
DV男が罪に問われることもなく、彼が望んでいたように彼女が死んで喜んでるかもしれない…と思ったら悔しくて涙がでました。
彼女は猫丸が泣いてるのを見て「ありがとう、これで心が軽くなった」と言いました。
彼女は「誰かに訊いてもらいたかった。一緒に泣いてくれてありがとう。迎えに来てくれた人がいるから、もう行くね。」と光に包まれ消えました。
時計をみると、午前3時33分。
この出来事は感覚的に10分程度だと感じていましたが、実際に経過した時間は3時間半も経っていたのです。
彼女が成仏できたことだけは救いでした。
彼女のご冥福を心から祈ります。
さて、DV(ドメスティックバイオレンス)という言葉が出てきてからどれ位経つのでしょうか。
DVとは、同居関係にある配偶者や内縁関係の間で起こる家庭内暴力のことです。
近年ではDVの概念は同居者だけでなく、元夫婦や恋人にも及んでいます。
今の時代だけでなく家庭内暴力はいつの時代にもあったと思われます。
現代人は家庭内の情報を簡単に出せる環境下(SNSなど)にある時代となり、家庭内の事情が簡単に露呈されるようになりました。
DV問題が多くなったことで、DVについて相談できる専門家や避難所も増え、殺人事件に発展するようなケースも未然に防ぐことが出来るようになったとはいえ、家庭内の問題はやはり水面下ですので、DVの簡単な解決は難しいといえます。
被害に遭っているなら助けを求めればいいじゃない?
と、DV被害の経験のない方は、必ずそういいます。
被害のレベルにもよりますが、被害者は加害者を常に恐れています。
被害に遭っていることを他人に相談するだけで殺される、家族にも危害を加えられると脅かされてもいるので…本気でそう思い込んでいる人が多く存在しているのです。
簡単に助けを求められないし、親や親族に相談することさえ難しことだと思い込んでいるのです。
DVの被害に対して、相手と別れれば良いとか、付き合わなければ良いとか、そんな単純な事で解決出来ないのが現状なのです。
事件にならないDV被害は恐ろしいほどあると思われます。
現在、DVで悩んでいる方は世界規模で言えば3人に1人の割合だそうです。
WHOによれば、男女問わずパートナーから暴力を受ける割合は全世界で30%に上るとの報告です。
しかし、これはあくまで判明されている数だけですから、実情はもっと数は増えるのでしょう。
先ほどの女性のような被害者が出ない為にも、やはり身近に相談できる窓口があることが望ましいですし、被害者は勇気を出して助けを求めることが必要です。
あの頃は、現在のようなDV被害者が避難できるシェルターもなく、一般にDV認識度の低い時代でした。
あの当時、DVシェルターがあったなら、彼女は死なずに済んだかも知れません…。
ほな(=゚ω゚)ノ